予防接種Q&A
予防接種Q&A
目次
- Q1.予防接種とはどんなものなのでしょう?
- Q2.定期接種、任意接種とは何ですか?
- Q3.任意接種は受けた方がいいのでしょうか?
- Q4.ワクチンの副反応とは何でしょうか?
- Q5.予防接種スケジュールはどうやって立てたら良いですか?
- Q6. 接種を忘れてしまったり、間隔が空いてしまった時はどうしたら良いですか?
- Q7.同時接種をしても大丈夫なのでしょうか?
- Q8.なぜ同時接種が奨められているのでしょうか?
- Q9.予防接種を受ける前後で注意することはありますか?
- Q10.当日予防接種を受けることができないのはどんな時ですか?
- Q11.どこに注射を打たれるのでしょうか?
- Q12.行政からの接種費用のサポートは?
- Q1.予防接種とはどんなものなのでしょう?
- A1.
◎こわい病気に対して免疫(抵抗力)をつけて、私たちを守ります。ウイルスや細菌の感染で発症する病気を感染症といいます。 予防接種はそれらの感染症に対する免疫を獲得し、その病気に罹らないようにするために行われます。予防接種の行われる病気は、そのほとんどは感染力が強く、一度発症すると有効な治療法がなかったり、あるいは死亡率が高かったり 後遺症を残す頻度が高いなど、重篤な疾患が多く含まれています。 予防接種はそれを受けることによって、それらの被害を避けることができます。
◎ひとりひとりを守ることは、社会を守ることにもつながります。ワクチンが予防するのはその子供本人の感染だけではありません。接種を怠って感染が広がれば、周囲の人々や地域全体にも危険を広げることになります。しかし、多くの人が受けることによってかつて天然痘を地球上から根絶したように、その病気をなくしてしまったり、あるいは流行を予防することができます。つまり、予防接種を受けるということは、その方が病気に罹らず健康でいられるようにするのと同時に、その方の家族や友人、将来生まれる子供達の健康をも守ることになるのです。
- Q2.定期接種、任意接種とは何ですか?
- A2.
日本には「定期接種」と「任意接種」がありますが、基本的にワクチンの重要性は同じです。定期予防接種は、国や自治体が接種を強くすすめているワクチンで、接種側にとっては経済的負担の少ないワクチンです。
一方、任意接種ワクチンは決して受けなくてよいワクチンではありませんが、接種するかどうかは、接種を受ける側に任されています。また健康保険は適用されませんので、接種費用は自己負担となります。
WHOではおたふくかぜ、ロタワクチンなども、病気の重さなどから、どんなに貧しい国でも、国の定期接種に入れて、国民を守りなさいと勧告しております。最近では、日本でも多くのワクチンが定期接種化され、保護者の費用負担なく受けられるようになっていますが、まだまだ任意接種のワクチンの認知度は低く、接種費用も自己負担であるため接種率も低く、病気に罹るリスクも高くなっています。(自治体によっては接種費用のサポートが充実しているところもあります。)
接種を受けずに感染症にかかり、重症化した場合のリスクも考慮の上、かかりつけ医とよく相談して、決めるとよいでしょう。
- Q3. 任意接種は受けた方がいいのでしょうか?
- A3.
保護者の方々が受けた方がいいか悩まれるのは、一般的に水ぼうそうやおたふくかぜのワクチンだと思います。「軽い病気だから」「予防接種を受けずに一度感染して免疫をつければいい」、というような考え方をする方もいらっしゃるかもしれません。しかし、軽いと思われがちな水ぼうそうやおたふくかぜは、重い合併症を起こしたり死亡する事もあります。水ぼうそうは脳炎や肺炎、おたふくかぜでは、髄膜炎や非常に治りが悪い難聴、思春期以降では睾丸炎、卵巣炎となることがあります。日本では、毎年600-700人がおたふくかぜで難聴になり、後遺症としての難聴は、一度生じると治療法はありません。私自身のそのような方を見てきた経験もあり、そういった悲慘な病気から防ぐことができる予防接種というものの重要性を痛切に感じております。ほとんどの子供がワクチン接種している米国では、水痘とおたふくかぜの患者はほぼ消失しています。子供の未来を守るため、定期・任意接種どちらのワクチンも積極的に受けてほしいと考えています。
(水ぼうそうは、平成26年10月1日より定期予防接種となりました。)
- Q4. ワクチンの副反応とは何でしょうか?
- A4.
ワクチンの副作用は「ワクチンを接種することで、免役力をつける以外の反応がでる」ことをいい、正式には「副反応」と呼ばれています。
予防接種が原因だと確実に言える副反応は、痛みや腫れなどの局所反応や発熱などの軽い症状です。極希に重篤なアレルギー反応の一つであるアナフィラキシーショックや経口ポリオ生ワクチン(現在は不活化ワクチンが使用されています)による麻痺、免疫不全者のごく一部で生ワクチンによる重症感染が起こるケースがあります。
副反応がこわいと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、接種した場所が赤く腫れたり、少し熱が出る程度の軽い副反応がほとんどです。
病気の発症や合併症などの重大な副反応もありますが、必ずしもワクチンが原因だと断定できない場合が多くあります。実は、副作用の報告には、予防接種を受けていなくても発生したであろう「紛れ込み事故」が多く含まれています。
ワクチンを接種した時に起こる副反応と、ワクチンを接種しないでその病気にかかった時の危険性を比較すると、ワクチンを接種しないで重症になった時の方が、ずっとこわいといえます。ワクチンの価値は相手の病気の恐ろしさによって決まるのです。
- Q5.予防接種スケジュールはどうやって立てたら良いですか?
- A5.
予防接種の種類は多く、受ける時期も回数もそれぞれ異なるため、スケジュールを立てるのは簡単ではありませんね。予防接種スケジュールを考える際重要なのは以下の3つです。
- 1. 罹った時の重症度
- 2. 周りでの感染症発生状況
- 3. 接種可能な最適年齢
特に、乳児早期のワクチンは生後2カ月齢からの接種開始が理想的です。先までのスケジュールを細かく決めてしまう方法もありますが、お風邪などを引いてスケジュールがずれてしまったり、忙しい子育て世代ではそこまで決められない家庭もあるかと思います。そういった方にはまず受診して接種を済ませ、その際に次回接種するワクチンを分かりやすいようお話させて頂きます。信頼して相談できる医療機関(スタッフ)を作ることが大切です。
- Q6.接種を忘れてしまったり、間隔が空いてしまった時はどうしたら良いですか?
- A6.
ワクチンは、規定回数の接種を受けることが有効性の観点からは何よりも大切です。しばらく間隔が開いてしまった場合でも、遅くはないので、医療機関に相談してください。不活化ワクチンの追加免疫なども、少々間隔が空いてしまっても忘れずに実施しておくことが大切です。
- Q7. 同時接種をしても大丈夫なのでしょうか?
- A7.
同時接種で基本的に組み合わせに制限はなく、それぞれのワクチンに対する有効性についてお互いのワクチンによる干渉はなく、それぞれのワクチンの有害事象、副反応の頻度が上がることはないことが現在分かっています。また、同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数に原則制限はありません。
しかし、それらは全ての組み合わせについて確認されている訳ではないため、当院では同時接種を行う場合、必ず30分以上安定していることを確認の上ご帰宅して頂きます。安全に対してもできるだけ万全の体制をとらせて頂こうと思います。
- Q8.なぜ同時接種が奨められているのでしょうか?
- A8.
同時接種の利点として以下のことが挙げられます。
- 早期接種を可能とし、予防効果が上がる
- 医療機関への受診回数を減らせる
- 接種に費やす保護者の時間、手間、費用が節約できる
- 各ワクチンのやり残しを防げる。(摂取率が向上する。)
従って、当院では同時接種を積極的に行っていきます。 日本小児科学会でも、ワクチンの同時接種は日本の子どもたちをワクチンで予防できる病気から守るために必要な医療行為と発表しています。
参考:厚生労働省 定期接種実施要領
日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方
- Q9.予防接種を受ける前後で注意することはありますか?
- A9.
(接種前の注意)
- からだの調子の良いときに受けてください。
- 予防接種を受ける前の日になるべく入浴をすませ、体を清潔にしておいてください。
- 接種を受ける日に起床時に体温をはかり、ふだんと変わった事がないかを確認してください。
- 接種を受ける前は激しい運動はさけてください。
- 当日は母子手帳をお持ち下さい。
予診票の回答にそって、保護者に確認し、体温測定・診察を行って、予防接種を受けられるかどうか判断いたします。
以下に該当する場合は、予防接種を受けることができませんので、後日ワクチンを接種するか、どのように接種したらよいかを医師と相談する必要があります。
(接種後の注意)- 接種後30分程度は病院内で様子をみるか、医師とすぐに連絡がとれるようにしてください。
- その日と翌日は激しい運動はさけてください。
- 接種部位は清潔に保ってください。強くこすらないで下さい。
- いつもと変わった様子がないか注意して見てください。
- もし局所の異常反応や体調の変化、さらに高熱、けいれん等の異常な症状が出たときは、直ちに医師の診察を受けてください。
- Q10.当日予防接種を受けることができないのはどんな時ですか?
- A10.
以下の場合は、後日接種するか、接種について医師と相談する必要があります。診察をご希望の際はお申し出下さい。
- 明らかに発熱(通常37.5℃以上)しているとき
- 重篤な急性疾患にかかっていることが、明らかなとき
- 予防接種を受けようとする病気に既にかかったことがあるか、現在かかっているとき
- 注射生ワクチンを受ける場合、4週間以内に他の注射生ワクチンを受けたとき
- その他、医師がワクチン接種に不適当と判断したとき
- Q11.どこに注射を打たれるのでしょうか?
- A11.
当院では接種場所として上腕外側や大腿前外側部も候補としていくことで同時接種を推進していきます。(大腿前外側部は、腫れと痛みが少なくワクチン接種がしやすい部位です。欧米では、両側大腿への4本以上のワクチン接種が一般的に実施されており、日本ではまだ行っている病院は少なかったのですが、同時接種での有用性が認められ2012年から日本小児科学会でも接種部位の候補として勧められています。)
<監修者情報>
木村 絢子 副院⻑
平成19 年東京慈恵会医科大学卒業。研修医としてプライマリーケアを学び、小児科全般の治療に従事。その後、同大学医学部附属第三病院にて病棟⻑として勤務。小児科疾患以外にも、日本アレルギー学会アレルギー専門医として、小児アレルギー疾患を得意とし、お子さま
の健やかな成⻑を医療を通じて⾒守る医師として活躍。
日本小児科学会認定小児科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医