いびき、睡眠時無呼吸症候群(小児)
いびき、小児睡眠時無呼吸症候群
いびき、小児睡眠時無呼吸症候群について
- 小児睡眠時無呼吸症候群について
こどもの成長発達に影響を及ぼす『いびき、小児睡眠時無呼吸症候群』
(小児)いびき・無呼吸 問診票
(下記内容を写真入りでQ&A形式で要点をまとめてあります。)
(下記の診療内容は感冒症状がないことが前提です。感冒症状がある場合は、まず通常の治療で感冒症状を改善することが優先されます。)
また、下記のような専門的診察は一度に全てを行うことはできず経過をみる必要もあるため、
原則平日に複数回通院して頂くことになります。
初診時は平日に必ず耳鼻科、小児科両方の予約をお取りください。また、日曜日は対応していないのでご注意お願いします。再診時は許可があれば土曜日も可。耳鼻科のみでも可。日曜日は不可)
よろしければ問診票をご記載の上、ご来院ください。
Web問診のいびき・無呼吸問診票をご利用されるのもお勧めです。
小児のいびきは就学前から小学校低学年で多く、いびきの有病率については、米国小児科学会が既報をまとめた結果、2~8歳で習慣的にいびきをかく小児の割合は3.2~12.1%であり、1歳児の6.6%に習慣的ないびきがあるとの報告があります。かなり多いですね。 いびきは何が問題になるのでしょうか。実はいびきというのは、小児睡眠時無呼吸症候群という病気のサインであることが多いのです。そして、その病気がどういった影響を及ぼすかというと、
1つは、発育に影響します。重症だと深い睡眠がとれないため、成長ホルモンという成長に関わるホルモン分泌が影響を受けるため身体発育が遅延すると言われています。また、顎の発育が悪くなって、成人になっても睡眠時無呼吸症候群になりやすくなる可能性が言われています。
2つ目には、発達にも影響することが分かっています。この病気の小児は、認知機能や行動面で問題があることが多く、発達の遅れや学力低下、注意欠如・多動性障害、攻撃的行動に関係することがあるとされています。いびき、小児睡眠時無呼吸症候群の原因は、解剖学的な要因として代表的なものは、アデノイド、口蓋扁桃肥大(3-8歳ごろに生理的に大きくなります)によって空気の通り道が狭くなっていることです。また、鼻づまりも強く影響します。幼少時は鼻呼吸が成人以上に重要で、鼻炎による軽度の鼻閉でもいびきや小児睡眠時無呼吸症候群の原因となるため、鼻呼吸障害の治療が重要と言われています。更に、欧米人に比べて日本人は顎が小さいということも原因の一つとなっています。
- 小児睡眠時無呼吸症候群の診断
1.問診
小児の閉塞性睡眠時無呼吸の診断は、夜間・日中の症状、終夜睡眠ポリグラフ検査の組み合わせよりなります。 小児睡眠時無呼吸症候群では自覚症状を訴えることは少なく、日中への影響も含め、保護者の観察が重要となります。
睡眠中の徴候としては、いびき、努力性呼吸(パジャマをあげた状態で観察した陥没呼吸)、無呼吸、開口、頻回の寝返り、寝汗、夜尿、咳や嘔吐による中途覚醒、チアノーゼなどがあります。
日中の症状では日中傾眠よりも、注意欠如/多動性障害(ADHD)様とされる注意散漫、学業上の問題など、小児独特の症状にも注意の必要があります。そのほか睡眠覚醒リズムの乱れ(起床時刻が遅く強制的な覚醒を要する。 2~3時間以上の長時間にわたる昼寝、入床をいやがり入眠まで時間がかかる。)なども参考となります。
2.診察
アデノイド顔貌、鼻閉、口呼吸、胸郭変形、肥満さらに肺高血圧や身体発育の問題などの存在は参考となるため、注意して診察します。また、局所所見として上気道の診察は重要で、アデノイドや口蓋扁桃肥大による気道の狭小は大きな要因となります。さらに小児ではいびきをきっかけに上気道の腫瘍性病変が発見されることもあり、内視鏡(ファイバー)での鼻咽腔や喉頭所見も重要です。画像診断では頭部X線規格写真(セファロメトリー)が有用な場合もあり、学童以上であれば必要に応じてご紹介も検討します。
3.睡眠検査と問題点
小児においても診断のためのゴールドスタンダードは終夜ポリグラフ検査(nPSG)ですが、小児のnPSG可能な施設、専門技師、医師の不足や検査のコストが保険収載内ではカバーしきれないことなどから、疑われるすべての患児をn-PSGで診断することは難しいのが現状です。したがって、本来はスクリーニングの一つとして行われる成人用の簡易モニターやパルスオキシメーターの自動解析による結果が、診断目的に使用されることが多いのですが、小児での簡易モニターの単独使用と自動解析による診断は、精度が高くないのが難点です。
そこで、当院では学会でも高い有用性が報告されているビデオ解析を併用しています。睡眠中の画像録画、音声録音もしくは直接観察は、簡易な方法でありかつ実践的です。睡眠中の無呼吸・低呼吸の目撃が診断に繋がります。是非、携帯(いわゆるガラケーでも、スマートフォンでも)いびきを録画したビデオ画像をご持参ください。
以上のように、小児独特の病態を理解し、臨床所見と簡易モニターを含めた睡眠検査、さらに病態把握に有用な補助検査の結果を総合的に考慮した上で診断、治療を進めていくことが重要であり、当院ではそれを専門的に行っています。
- 小児睡眠時無呼吸症候群の治療
一般的な選択肢としては
・薬物治療(内服薬、点鼻薬)
・手術(アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術)
・減量
・CPAP
(矯正歯科的治療法(上顎拡大):短期的な効果を期待するものではなく、将来、成人になった時の睡眠時無呼吸症候群を予防するため)
などがあります。
治療効果が最も高いと言われているのは、手術的治療です。それを理解した上で、当院ではまず薬剤や鼻処置などによって、お子さんにとって特に重要な鼻呼吸の治療を重要視しています。手術までいかずとも、ある程度改善できる場合があるからです。
鼻づまりや鼻水などのアレルギー性鼻炎の症状は1日のうちで夜間から朝にかけて特に悪化しますし、黄色鼻汁が出る副鼻腔炎などを合併している場合は、それに対する治療も必要となります。ただ、薬物治療でも効果が乏しければ、やはり手術的治療も必要かどうか専門的な病院へのご紹介を検討させて頂きます。
また、補助的に口腔筋機能療法(MFT)を勧めさせて頂くこともあります。舌の働きや舌の位置を適切にしたり、口唇を閉じやすくする訓練です。口腔筋機能療法により舌の働きや位置を改善し、自然に口唇を閉鎖できるようにすることで、いびきや睡眠時無呼吸症にも効果が出る場合もあります。(2022年3月追記)
減量、CPAP、上顎拡大は非常に特殊な例なので、ここでは省きます。
- 乳幼児における注意すべき鑑別疾患
また、乳幼児期にいびきと鑑別を要する喘鳴などには、注意を要し治療方針も変わってきます。当院では耳鼻咽喉科と小児科が密接に連携しながら他の疾患の鑑別にあたることができるのも、特徴の一つです。
<監修者情報>
木村 暁弘 院⻑
平成16 年東京慈恵会医科大学卒業。その後研修医として耳鼻科の専門性を高めるため、耳鼻咽喉科学教室に入局。同大学病院と関連病院にて耳鼻咽喉科診療、睡眠外来に従事し当院開院。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。いびき・睡眠時無呼吸症候群などの睡眠医療を専門とし、耳鼻科・小児科の連携による子どもから大人まで三世代が受診しやすいクリニックづくりをモットーとしている。
日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医、日本睡眠学会認定専門医、補聴器適合判定医