五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン(不活化)
- ■五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンとは
- ジフテリア(D)、百日咳(P)、破傷風(T)、ポリオ(IPV)、ヒブ(Hib)の5種類に対して予防が期待できる不活化ワクチンです。2024年4月より定期予防接種の対象になり、基本的には2024年2月以降に生まれた方が接種を受けることができます。2024年1月以前に生まれた方もご希望の場合には5種混合ワクチンの接種が可能です。
- ■どんな病気?
- ○ジフテリア
ジフテリアは、細菌が感染後に出す毒素で起こる病気です。ジフテリア菌は咳で人から人へ感染します。潜伏期間は2~7日です。気道がふさがって息が出来なくなったり、菌の毒素で神経麻痺や心臓の筋肉の炎症を合併して命に関わることもありますが、定期ワクチン接種の推進により、1999年以降に国内ではジフテリアを発症した患者さんの報告はありません。
○百日咳
百日咳は、咳で人から人へ感染します。潜伏期間は5~21日です。百日咳菌がのどなどにつき、かぜのような症状で始まり、「ヒュー」という笛を吹くような音が聞こえるせきが長く続くのが特徴です。 けいれんや脳炎を起こしたり、1歳未満、とくに生後6ヵ月以下では無呼吸状態が続くことにより、命に関わることもあります。
○破傷風
破傷風菌は、菌が感染後に出す毒素で起こる病気です。破傷風菌が傷口から入って、菌の毒素で筋肉がけいれんし、最終的には後ろに大きく弓なりになる姿勢になり、痛く苦しい症状を伴います。呼吸ができず、命に関わることもあります。
ワクチンでしか免疫ができない病気です。
○ポリオ(急性灰白髄炎)
感染者の糞便中に含まれるポリオウイルスが感染源となります。かつて「小児まひ」と呼ばれ、ワクチンが導入されるまでは毎年何千人もの患者さんが出ていました。
感染しても、ほとんどの場合は、発病しないか、発病しても多くはかぜ症状ですが、まれに手足に麻痺を起こし、運動障害が残りますが、ワクチン接種により予防ができます。
○ヒブ感染症
ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型という病原体が原因で、略してヒブ(Hib)といわれます。インフルエンザ菌はいわゆる「インフルエンザ」を起こすインフルエンザウイルスと混同されますが、全くの別物です。ヒブは人ののどや鼻の奥にいる身近な細菌で、感染経路は主に咳やくしゃみを吸い込むことで感染する飛沫感染が多いです。
ヒブ感染症が引き起こす主な病気として細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)と急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)があげられます。
細菌性髄膜炎について、脳や脊髄(せきずい)をつつむ髄膜(ずいまく)に細菌が入り込んで炎症を起こし、発熱、嘔吐、頭痛、けいれんなどの症状を起こします。進行すると意識が低下し、難聴や四股の麻痺などの後遺症を残したり命を落とすとこもあります。
急性喉頭蓋炎について、喉頭蓋(こうとうがい)とは食べ物を飲み込む時、気道に入らないように蓋をする働きをするものです。
この喉頭蓋が感染により炎症を起こし、腫れることによって発熱や呼吸が苦しくなるなどの症状が現れます。重症化すると空気の通り道を塞いでしまい、命に関わることもある病気です。
日本では抗菌剤を使用する機会が多く重篤な髄膜炎は防げていましたが、抗菌剤の使いすぎによる耐性菌の問題が出てきました。耐性菌とは、抗菌剤が効きにくく、治りにくい感染症の原因になります。特に抵抗力が弱い小児に対する予防の必要性が見直されてきました。 - ■接種時期と回数
- 全4回
(生後2ヵ月から20〜56日の間隔をあけて3回、3回目終了後1年〜1年半の間に1回)
- ■ワクチン接種ができない方
- ・発熱がある方
・重篤な急性疾患にかかっている方
・ワクチンの成分によってアナフィラキシー(重度のアレルギー反応)を起こしたことがある方 - ■ワクチン接種に注意が必要な方
- 以下に当てはまる方は事前にご相談ください。
・心臓、血管、腎臓、肝臓、血液に持病がある方
・これまでの予防接種で接種後2日以内に発熱や全身性発疹等アレルギーを疑う症状のある方
・過去にけいれんの既往がある方
・過去に免疫不全の診断がなされている方
・先天性免疫不全症の病気をもっている近親者がいる方
・ワクチン成分に対してアレルギー反応を起こすおそれのある方
<監修者情報>
木村 絢子 副院⻑
平成19年東京慈恵会医科大学卒業。研修医としてプライマリーケアを学び、小児科全般の治療に従事。その後、同大学医学部附属第三病院にて病棟長として予防接種・健診外来を担当。現在は、渋谷区立初台保育園 園医を担当。
日本小児科学会認定小児科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医