アトピー性皮膚炎の治療 | 渋谷区代々木の南新宿クリニックアレルギー専門サイト
アトピー性皮膚炎治療のゴール
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能の低下やアトピー素因(家族内にアレルギー疾患をもつ人がいるなど)に加え、様々な要因が重なって症状の悪化を繰り返す皮膚の病気です。生まれながらの体質の影響もあるため、病気そのものを根本から完全に治す治療は難しいですが、患者さんの年齢や状態に応じた適切な治療で症状をコントロールすることができます。このような方針に基づき、当クリニックではアトピー性皮膚炎の治療のゴールを以下のように掲げています。
・症状がないあるいは症状があっても軽い症状のため、日常生活に支障がない
・軽い症状は続くが、急激に悪化することは稀で悪化しても持続しない
アトピー性皮膚炎は強いかゆみに伴う睡眠の質の低下や集中力の低下を起こし、長期にわたり不快な症状を繰り返すため、不安を抱えている患者さんは多いと思います。私たちの願いは、アトピー性皮膚炎に悩む患者さんに一人でも多く、毎日を笑顔で過ごしてもらえるお手伝いをすることだと考えております。
あなたの症状の程度はどれくらい?
~アトピー性皮膚炎 重症度チェック~
アトピー性皮膚炎の重症度はいくつかの基準が提唱されていますが、治療のための目安として下記の分類がアトピー性皮膚炎治療ガイドライン2018年で定められています。実際に治療薬を選択する際は、下記の分類だけでなく、個々の皮疹の重症度やかゆみの強さ、日常生活への障害度なども参考にします。
段階 | 症状 |
---|---|
軽症 | 面積にかかわらず、軽度の皮疹(注1)のみみられる。 |
中等症 | 強い炎症を伴う皮疹(注2)が体表面積の10%未満にみられる。 |
重症 | 強い炎症を伴う皮疹(注2)が体表面積の10%以上、30%未満にみられる。 |
最重症 | 強い炎症を伴う皮疹(注2)が体表面積の30%以上にみられる。 |
(注1)軽度の皮疹:軽度の紅斑、乾燥、落屑主体の病変
(注2)強い炎症を伴う皮疹:紅斑、丘疹、びらん、浸潤、苔癬化などを伴う病変
アトピー性皮膚炎の治療における「3大ポイント」
アトピー性皮膚炎の治療において大切なのは、皮膚が炎症を起こすのを抑えて、皮膚のバリア機能を改善することです。また、悪化要因があれば対策を行い、刺激を少なくすることも大切になってきます。そのためには【1】薬による治療(薬物療法)【2】スキンケア【3】悪化要因の対策という3大ポイントを押さえておくことが重要です。
【1】薬による治療(薬物療法)
・ステロイド外用薬
かゆみや湿疹の原因となる皮膚の炎症を抑える効果があります。炎症を伴う皮膚の病気の治療でよく用いられる、アトピー性皮膚炎の標準的な治療です。
ステロイド外用薬は種類によって作用の強さが異なります。年齢や症状が現れている部位など、患者さん一人ひとりに合った強さのステロイド外用薬を医師が判断して処方するようにしています。
・薬の塗り方(手順と方法)
1.皮膚を清潔にする
清潔な皮膚の上に薬を塗ることで薬の効果が高まります。洗顔後や入浴後などがお勧めです。
2.保湿剤を塗る
3.ステロイド外用薬を塗る
ステロイド外用薬が処方されている場合は、一緒に保湿剤も処方されている場合が多いです。ステロイド外用薬と保湿剤はどちらを先に塗っても効果は変わりません。ステロイド外用薬を先に塗ると、後から保湿剤を塗り広げる際に患部以外の場所にもステロイド外用薬が広がるため、まず「保湿剤」から塗ると良いでしょう。
☆軟膏やクリームを塗る量
保湿剤もステロイド外用薬も、たっぷりと塗ることで十分な効果が得られることが多いです。
成人の手のひら2枚分の面積を塗る目安は、25gや50gの大きいチューブ(口径5mm)から、成人の人差し指の先端から第一関節まで出した量(=1Finger Tip Unit 約0.5g)です。
軟膏やクリームの塗り方
薬を少しずついくつかに分けてのせます。最後に薬を指の腹でまんべんなく伸ばします。この時、指で患部に薬を擦りこまないように注意してください。
薬をいくつかに分けてのせた様子
・抗アレルギー薬
抗アレルギー薬の一種である、抗ヒスタミン薬を併用することもあります。抗ヒスタミン薬はかゆみを抑えるための内服薬(飲み薬)です。ステロイド外用薬と比べて、あくまで補助的なものなので、この薬だけでアトピー性皮膚炎の炎症を抑えきれるわけではありません。
【2】スキンケア
・スキンケアの重要性
アトピー性皮膚炎を改善するにあたって、皮膚を清潔な状態に保つことはとても大切です。アトピー性皮膚炎を悪化させる要因である黄色ブドウ球菌や汗は皮膚に付着している時間が長くなるほど皮膚の炎症を悪化させてしまします。1日2~3回のスキンケアによって、皮膚を清潔な状態に保つことで薬の効果が高まる他、炎症が起こりにくくなるので皮膚のバリア機能の回復にも繋がります。
・日常のスキンケアにおける注意点
毎日のスキンケアは皮膚を正常な状態に保つ上でとても大切です。ただし、スキンケアにも気づかぬ落とし穴がたくさんあります。代表的な注意点を以下に紹介します。
<皮膚の保湿、保護>
皮膚が乾燥するとバリア機能が低下してしまいます。入浴後など皮膚を清潔にした後は乾燥させず、保湿剤を使って皮膚がしっとりするよう保湿することを心掛けてください。
また、乳児の場合はよだれの刺激で口まわりの炎症が収まりにくい場合があります。食事の前に白色ワセリンなどを口まわりに塗ってあげることで、食べ物やよだれの刺激から炎症部を保護してあげることができます。
<入浴>
皮膚を清潔に保つために入浴をすること自体は良いのですが、体温が高くなるとかゆみが増すので長時間の入浴や高温のお風呂などには気をつけてください。また、顔や身体を洗う際にはタオルやスポンジなどでゴシゴシこするのではなく、よく泡立てた泡で皮膚を素手でもむようにして汚れを落とすようにしてください。
入浴後に身体についた水滴を拭き取る時も入浴時と同様にこするのは避けて、肌触りの良いタオルを用いて抑えるように水分を吸い取るようにしましょう。
<スキンケア製品>
皮膚への刺激の少ないものをおすすめします。石けんの場合は、なるべく防腐剤や着色料、香料などが入っていないものを使用してください。
<衣服>
衣服を選ぶ時は、肌触りが良く汗を良く吸い取って、蒸れにくい素材のものを選びましょう。洗濯を重ねると、肌触りが悪くなってきますので、古くなった衣服は新しいものに交換すると良いでしょう。
【3】悪化因子の対策
主な要因として、ダニやカビ、ペットの毛、花粉、汗、黄色ブドウ球菌、生活リズム(夜型生活)、睡眠不足、ストレスなどが挙げられます。これらの要因は、患者さんによって異なりますが、1つが原因で症状が悪化するというよりは、複数の要因が重なって症状が悪化するケースが多く見られます。 それぞれの特徴を知り、効果的な対策を行うことが大切です。
<家のアレルゲン対策>
ダニ・カビ・ペットの毛などは、日々の掃除が大切です。掃除しやすく、埃がたまりにくいよう、片付けを行い、要らない・使わないものはなるべく処分しましょう。
・ダニ
ダニは高温多湿の環境を好むため、特に寝具の対策は大切です。定期的に布団を干したり、布団を掃除機で吸ったりするようにしましょう。
毎日の掃除機がけも大切です。1m×1mの面積は20秒以上かけてゆっくり掃除機をかけましょう。絨毯はできれば使用しないほうが良いですが、使用せざると得ない場合は、丸洗いするか、こまめに掃除機をかけましょう。
・カビ
お風呂、台所、トイレはカビの発生しやすいところです。住居内の窓や戸を2箇所以上開けて換気を十分に行い、湿気がこもらないようにすることが大切です。また、エアコンや空気清浄機などのフィルター掃除も適切な頻度で行いましょう。
・ペット
毛のあるペットはなるべく飼うのは避けましょう。動物そのものにアレルギーが無くても、ダニの住処となります。
<監修者情報>
木村 絢子 副院⻑
平成19 年東京慈恵会医科大学卒業。研修医としてプライマリーケアを学び、小児科全般の治療に従事。その後、同大学医学部附属第三病院にて病棟⻑として勤務。小児科疾患以外にも、日本アレルギー学会アレルギー専門医として、小児アレルギー疾患を得意とし、お子さま
の健やかな成⻑を医療を通じて⾒守る医師として活躍。
日本小児科学会認定小児科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医